works

ウサギ

ジョン・マーズデン 文 ショーン・タン 絵

岸本佐知子 訳

河出書房新社

2021

ウサギ

book, 2021/01


人に歴史あり。ショーン・タン以前のショーン・タンという感じでしょうか。まぎれもなくショーン・タンだけどショーン・タンじゃない。みたいな。この本はオーストラリアという国家が出来上がる端緒をモチーフにした絵本だと思います。そこからもう少し踏み込んで考えると、「歴史」というものは視点をどこに置くかで「見え方が変わりえる」ということと同時に、「そもそも我々はどうしてこういうことになっているのか」を辿る道具になるものだと思います。現在をあるべき良い姿とみなして、そこへいたる歴史をその都合に合わせて、不要と思われるものを削除しようとする人間を「歴史修正主義者(Revisonist)」と「蔑称」で呼びますが、この本はそういうことへの目配せも含む複数の視点を用意しながら、「どうしてこういうことになっているのか」を考えるように作られています。それはきっとこういう自覚をうながすのではないでしょうか。「我々はウサギに攻め込まれつつ同時にウサギでもある」と。

 

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