横山雅彦・中村佐知子
筑摩書房
2021
book, 2021/04
この本は本文の設計・デザインから流し込みまでやっています。この本は、英語の文法をはじめからやり直してその文法知識をそのまま「話せる」ところまで持っていくという魔法のような学習法の本です。「魔法」なので、それを実現させるためのテキスト(原稿)は、かなり複雑な構造を持つことになるわけです。それを誌面のデザインに落とし込むために、和文と欧文の混植への考え方、強調部分の程度、ドリル(問題)や説明部分のインデント量の設定などなど、問題を読みくだす時の速度も勘案しながら、様々な要素を反映させる作業が必要でした。最初はできるだけいろいろなアイデアを盛り込んで初校を上げて、そこから原稿の変更も含め、数度の修正を経て最終版を完成させました。その作業を通じて理解できたこととして、外国語もしくは、母語とは別の言語ができる(話せる・読める・書ける)ようになるために必要な工程というのは、ある程度「脳」を加工し直すようなものなのではないかと。それを「慣れ」と呼ぶ場合もあるんだと思いますが、その「慣れ」が訪れるまでに、「どのくらい本気なんだ?」「本気だったらできるんだぞ」とグイグイ迫ってくるようなテキストだと思います。ドナルド・キーンさんが日本語を覚えるのに「3ヶ月あれば十分」とおっしゃってたそうですが、自分の中の必然性とか動機があればそれも可能なんでしょう。逆に言うとそれがないと無理。自分の中にどれだけ必然性を持たせられるか。きっと、どんなこともそこなんじゃないかなと。言葉は呪術性を持っている(言霊という言葉しかり)と思うので、自分の中の必然性をどれだけドライブさせられるかが物事を習得する際に必要な根本的な要素なのではないかと思います。