マーガレット・ラスティン
マイケル・ラスティン
松木邦裕・武藤誠・北村婦美 監訳
金剛出版
2021
book, 2021/01
この本の冒頭に「メラニー・クラインに関しては、ここに改めて紹介する必要はないと思います。」と、あるくらい精神分析の世界では基礎的な存在らしいのですが、私は打ち合せで「で、メラニー・クラインってどんな人なんですか?」と聞かないといけないわけですから話は単純ではありません。しかし、その彼女が、かつては異端視されていたり、その理論が論争をよんだりしていたと聞けば「いいじゃないですか、面白そうだ」となれるわけで、把握のとっかりができます。そんなところから、おそらくたぶんフロイトという人は天才的な人で一人で全く新しい体系を作り上げちゃった人なんだろうな。という(判断を伴わないとりあえず保留にしたままの)仮定も持てたりしておもしろいんですね。その「全く新しい体系」を理解するのに困難を伴うから、ある考えが異端視もされたり、論争にもなり得るんだろうなと思うと、理解っていうのは誤解を訂正していくって作業でもあって、「全く新しい体系」というものにはきっと、その誤解への誘いみたいなのが幅広く用意されているんだろうなとも考えたりできるわけです。そして、そこで一派と言われるようなものを確立できた人はきっと自分なりの体系を立てちゃうんだろうなと、私はそのようにクラインさんを理解しました。