ショーン・タン 著
岸本佐知子 訳
河出書房新社
2012
book, 2012/12
この原作となっている絵本が本国で発売されたのが2000年で、それを映像化するにあたってショーンさん自身が監督・脚本・デザイン・美術をつとめて、なんと10年後に出来上がったのがこの映画です。
BOX SETの中身はDVDと「あの想定外の変な生き物は何?」という名前の本が一冊入っています。
この本はオーストラリアで昔からあるバードウォッチング図鑑で、原題を忘れてしまったのですが日本語に訳すと「あの鳥は何?」というものがあり、それを元ネタ(?)に映画の中に出てくる変な生き物を紹介してくれているという代物です。これがまたハンパなく凝っていて、ショーンさんの他の作品が好きな方はこれ目当てで買ってもいいくらいなもんだと思います。もちろん映画も2011年のアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞しているくらいですから、何をか言わんやですけれど。
担当の編集の方が国会図書館から借りてきた実際の「あの鳥は何?」を見させてもらったのですが、活版印刷で鳥の絵はカラーで差し込み綴じになっているかなり豪華なものでした。定番の図鑑らしいのでたぶんいろんなバージョンがあるんんでしょう。今回のこの日本語版を作るにあたってはそこらへんも意識しつつ「ズレ」「ボケ」「滲み」を一文字づつ加えていくという地道な作業をしています。一連のショーン・タン本では全部そういうのをやっているんですけどね。ちなみに本当の活版印刷はこの「ズレ」「ボケ」「滲み」さらに「窪み」が出ないように刷るのが職人が目指した仕事です。ここではあくまでもノスタルジー感を演出するという意味合いで、そういう加工をした。ということです。あしからず。
ショーンさんの本は世界各国で訳されて出版されているようなんですが、さすがに全部の国がこういう地道な作業をしてくれるわけではないらしく、日本語版を見本として他の国に見せたいので数冊(ロスト・シングの絵本の方らしいです)を送ってくれないかという依頼が来たそうです。すいません。わたくしはいまちょっと自慢をいたしました。が、著者であるショーンさんのお墨付きいただいたようなものですから、安心して日本語版を楽しんでもらえたらと。もちろん岸本さんの訳も冴えまくってますので。