山上敏子・下山晴彦 著
長崎訓子 装画
金剛出版
2010
book, 2010/08
行動療法の第一人者山上敏子さんが東京大学 大学院 臨床心理学コースの下山研究所というところで行った勉強会の模様を書籍としてまとめたものです。
すべての精神現象を「刺激⇄反応」という枠組で捉えて、それを「行動としてとる」という話からはじまるのですが、心理治療という場のことだけにとどまらず、普段から心がけておいてもいいんじゃないかと思いました。
噛み砕いていうと、ある人の行動がまわりから見て迷惑なことだとしても、その行動をとっている人が必ずしも迷惑をかけようとしてやっているとは限らない。ある「刺激」が「反応」を引き起して、さらにそれが「刺激」になり〜という循環の中で現れた「反応」に過ぎないんだっていう考え方です。そうすると、行動そのものには良いと悪いの区別がなくなるわけです。悪いことをしようという意図すら刺激に対する反応ですからね。すべての「行動」をフラットに扱えるようになるんです。って簡単に書いちゃいましたけど、この山上さんという方の人間に対する深い愛情から以上のようなことを理解させられるという本です。
精神に関わる病気を患う人は年々増加傾向にあるそうです。音楽を長年聴いてきているといらっしゃるんですよね。ドニー・ハサウェイとかカート・コバーンとか、で、知らずに周りが追いつめてるっていう場合も結構あるんじゃないかと思ったりもするわけです。自分も含めて。
そう考えたときに、この本は専門家や医師になろうという人でなくても、なにか一冊読んでみるとしたら候補に入れてみてもいい本なんじゃないかと思いました。
ということで、装画も長崎訓子さんにお願いしてあまり専門的な感じにしないようにしました。
実際の勉強会もきっとこんなリラックスした雰囲気だったはずです。