ソーニャ・ハートネット 著
野沢佳織 訳
河村怜 装画
主婦の友社
2012
book, 2012/07
舞台は第二次大戦中の東欧、主人公はロマの兄弟。逃げ込んだ動物園で真夜中の空爆。すると人のいないはずなのに話し声が…それは動物園の動物たちだった。彼らは話しはじめる。檻のなかから観察してきた人や村、戦争のこと、そして——。
と書くとあっさり聞こえちゃうのかもしれませんが、ちゃんと読んでいただければ、突き刺さります。それはこの物語がちゃんと人類や文明への批評というものを「寓話」として含むことができているからだと思います。
どうやら小学校の図書館にも採用されたそうです。こういう良質な「寓話」を読む習慣というのがもう少し日本に根付いてもいいんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょうか?
ちょっと話はそれますが、個人的にすごく開高健さんが好きで、この人の初期の作品に「流亡記」という万里の長城建設にまつわるそれはそれは素晴らしい「寓話」と読めるものがあり、なんでこういうのを書かなくなっちゃったのかなぁと昔から不思議だったのですが、それはきっとそういうものを読む読者が日本にあまりいないからなんだろうといまさらながら思い至りましたね。「私小説を書きなはれ。そやないと売れまへんでー。」orz
まぁ、そう考えるといろんな意味で「夏の闇」は到達点だと思います。
話をこの本に戻します。カバーはヴァンヌーボのVM、見返しにビオトープのその名もミッドナイトブルーというのを使いました。意外と見本が届く頃には細かい紙の指定までは覚えていなかったりするんですが、これも見本が届いて、本を開いて見えた見返しの色と紙質に自分で関心したという馬鹿な話があります。大事ですね、造本をしっかり考えるって。なんつって。