タカラモノ123
graphic, 2012/03
フォトグラファーの回里純子さんが中心になって活動されているタカラモノ123というプロジェクトが、そのプロジェクトの延長で企画された「石巻に東京の子供たちが描いた絵を使ったカレンダーを届ける」というプロジェクトでデザインを担当させていただきました。
個人的な話ですが、2012年の2月にたまたま仙台に行くことになり、そこまで行くんだったらもうちょっと足を延ばしてみようということで帰りの新幹線までの時間を利用して宮城県石巻市に行ってきました。
震災から1年近く経っていて、復興という言葉がメディアを通じて繰り返されていたことで自分の中に勝手なイメージがいつの間にか出来上がっていたのですが、実際に見た現地はそんな東京に住んでいる人間の淡い身勝手なイメージを軽々と覆してくれました。あの現実を見て以後、被災した方々が「復興」という時のその言葉の後ろには相当に強い気持ちと決意があるんだと改めて思うようになりました。逆にそのくらい気持ちがないと使うことすらできないだろう風景がそこにはありました。いまこの文章を書いている時点でもなんと表現したらいいのかわかりません。そしてその2月の下旬に回里さんからこのプロジェクトへの協力を打診されるという偶然が起こる不思議。大きなことをしなくてもいいから、自分ができることをできる範囲でできる限りやろうと思い、お話を受けさせていただきました。
今日が2012年3月10日ですから、今頃あちらに届いて明日に向けて手配が進んでいるはずです。まだ仮設住宅に住んでいる方がたくさんいると聞いているので、その部屋にちょっと飾ってみようかな、なんて思っていただけるといいんですが。その後報告があり、3月11日の夕方頃には全てなくなったそうです。見比べてどっちがいいか悩んでるお年寄りの方もいらしたそうで、とりあえずホッとしました。
印刷は蔦友印刷株式会社さんにご協力いただき、ほかにも協力してくださった方がいます。本当にありがとうございました。
ちなみにカレンダーの日付などの書体はUniversです。何年ぶりか分からないくらい久しぶりに使いました。そのUniversをデザインされたアドリアン・フルティガーさんが「Helvetica is the Jeans, and Univers is the Dinner Jacket. Helvetica is Here to Stay.」とおっしゃられているんですが、地にある大きな数字は後にHelveticaと呼ばれるようになった一番最初の書体、Neue Haas Groteskをクリスチャン・シュワルツというタイプデザイナーがデジタルで復刻したものです。ディナー・ジャケット着てるんだけど、下はジーンズ履いているって感じでしょうか? 気持ちとしては日常的に見るものなので、日付なんかはちょっと端正に見やすく邪魔にならない感じで、同時に少しくだけた緊張をほぐすような感じを出したいというのがあったのでこの組み合わせを選択しました。用紙はMTA+-FSです。