山崎孝明
金剛出版
2021
book, 2021/06
「精神分析」。ここでは特に「日本の精神分析」のガイドブックとして読者を観光客的目線に誘い、精神分析を時に深堀もしながら概観していくという新たな「perspective(パースペクティブ)」を提供するということなんですが、さて、自分で書いておきながら、このperspectiveをどう訳すかにちょっとこだわってみたいと思います。「per(through)+spect(to see)+ive(接尾辞)」なので、「(ある地点から)通り抜けて見る」→「その時の地点(視点)から見渡せる視線(見通し)」→「ある視点からの見通し」あたりが妥当な感じかもしれません。なぜこんなことにこだわるのかというと、視点を動かさずに見るのではなく、視点は常に可動なものなんだというのがこの本の大前提になっていると私が考えるからです。最近思うのが、この「視点は常に可動なもの」ということが欠けている「俺(私)がこう思う(考える)んだからそうに決まっているだろう」式の言説をよく見る気がしていて、それは単に立場を変えてものを見直すというような想像力の欠如からきているのかと思っていたのですが、それだけではなく、「不動の(揺るぎのない)自分を設定する」ということが「当然」で「当たり前」な「普通」によいこととされているからなんではないかと思ったからなんですね。まぁそれを「想像力の欠如」というのでしょうが。「揺るぎのない自己」なんて、なんてつまらないものに拘泥するんだろうと思いますが。