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臨床心理学増刊第9号「みんなの当事者研究」

熊谷晋一郎 編

金剛出版

2017

book, 2017/08

ちょっと誤解があるかもしれませんが、私が理解している範囲のことを書きます。「坂本龍馬はアスペルガー症候群だった」みたいな話があります。仮に坂本龍馬がアスペルガー症候群だったとして、(彼が現代に生きていたら)アスペルガー症候群と診断されて、そのアスペルガー症候群という枠の中に嵌められて、アスペルガー症候群として治療を受けることになる。と、どういうことが起きるか。

ひょっとすると彼は坂本龍馬になる機会を奪われていたかもしれない。

診断され病名が確定した、もしくは病理と見なされた途端に、本来はあるはずの個々人としての特殊性が無視されてしまうということが起こる。生きていくのに困難や苦労があったとして、それを解釈したり対処方を考えたり編み出したりするということを我々は普段やっているわけですが、その困難がいったん病理と見なされてしまうと、その当然の作業の機会を奪われ、専門家の治療に委ねられてしまう。

坂本龍馬がアスペルガー症候群だったとしても、その専門家とともに、彼が坂本龍馬になれるようなあり方がないだろうか。というのが「当事者研究」ということのようです。よく考えたらこの例えは、坂本龍馬を無駄に英雄視しない人にしか通じないかもしれない。あと、根本的に間違っていたら訂正します。

治療の進歩・進化という言葉に切り捨てられてきたものを取り戻す──ひょっとすると治療だけに関わらず──という方法を探ろうというのは、想像するだけで相当に手のかかる、誤解を恐れずに書くならば、めんどくさい作業のはずで、そこから目を逸らさずに向き合っている方々がいると知ることができただけで、個人的には救われた気持ちがします。

 


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