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臨床心理学増刊13号「治療文化の考古学(アルケオロジー)」

森岡正芳 編

金剛出版

2021

臨床心理学増刊13号

book, 2021/08

「学」という世界には「理念」と「現場」という水準の違う二つのもの(ほんとはもっとあるかも知れないけど)があって、その二つを混同しないようにした上で、「現場」が重要なんだというのが「治療文化」という言葉が作り出されてくる大元になっているのではないだろうかと推察します。なぜなら文化は人の営みの集積で、それが起こるのは常に現場だから。もしくは集積していく場を現場と呼ぶから。そしてそこを深掘りしてみようということから「考古学」という考え方を採用してみたということでしょう。そうするとそこでいろいろなものが再定義される可能性も生まれてくるのではないだろうかと。話がちょっと変わりますが、HIP HOPという音楽の1番のキモは定義し合うことだと私は思っていて、誰かがした定義の上に別の定義をかぶせてくるというのをやりあうことによってずーっと発展してきた音楽だと思うのですが、この「定義が更新され続ける」というのがコミュニケーションでもなににおいても大切なことなのではないかと思います。なので定義を一つに決めて動かそうとしない人との会話は面白くない。そういうことは「学」の世界ではありがちだろうと想像するので、この増刊号での取り組みは面白いなと私は思います。

 

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