Project: ARTS AND CRAFTS の名前の由来
1860年頃の英国は産業革命の影響で、 どんどん手仕事が機械に置きかえられ、 安易な物 があふれていました。 こんな世相に反発し 『ウィリアム・モリス William Morris(1834〜1896)』 達がかかげた理念は、 手仕事による芸術性をとり戻そうとするものでした。 1880年代になると、モリス商会と同じような 理想をかかげる工房やアトリエが多く生まれました。 1888年に開かれた展覧会の名をもって 彼等の運動は「アーツ&クラフト運動」と 後年呼ばれるようになり、 ヨーロッパのアールヌーヴォー様式や、 日本の民芸運動にも大きな影響を与えました。
モリスの多彩な活動の中でもひときわ充実しているのが、 自然の樹木や草花などをモチー フにした テキスタイルデザインです。 単なるデザイン的な美しさだけでなく、 どこにどのような 目的で使われるのか考え、 さらに、素材の風合いや持ち味、 染色の手法にもこだわり続けました。 その結果、モリス商会のテキスタイルは高価なものになり、 皮肉にも当初彼等が 意図していたような、 庶民にも手が届くようなものではなくなってしまったのです。
しかし、モリスは 「デザインと仕上がりの上質さが、 モリス商会の作品の命である」 というポリシーを最後まで貫きとおしました。 そのこだわり故に、 彼のデザインは一世紀以上も経た今日でも 少しも新鮮さを失わず、 印象的な世界を表現し続けているのです。
「If I Can」
1860年、自分の家を初めて持った時、 周りを見渡せば大量生産の粗悪なものばかりで、 心から自分の生活を豊かに感じられるものが 何一つないということに気付いたモリスは、 最初は自分のために友人達に協力してもらいながら、 生活を豊かにするための小芸術を作り始めたのです。 「If I Can」(もし私にできるなら)とは、 モリスが生涯モットーとした言葉です。
この経験からモリスは 「芸術職人」として商会を起こし、 壁紙、織物、家具、陶器、ステンドグラスなど さまざまなインテリア商品を デザインし製作していきました。 この家は保存修理に熱心な建築家によって 現在も所有され、完成から150年近くを経た 今もなお往時のままの美しい姿を保っています。
「ケルムスコット・マナー」
多忙だったモリスが 時間の許す限り足を運んだのが 最もイギリスらしい田園地帯コッツウ ォルド丘陵、 テムズ河上流にある「ケルムスコット・マナー」です。 7世紀に増築されたエリザベス朝の荘園館で、 1871年からラファエル前派の画家ロセッティと 別荘として共同で借り始めました。
この地は、労働の場所ロンドンの 埃と疲労から開放されるすばらしい避難所となり、 モリスはここで、趣味の釣りや庭づくりを楽しみ、 田園地帯を散策して自由な時間を過ごしました。 そしてその大自然が与えるインスピレーションをもとに、 さまざまなア イデアやデザインを生み出していったのです。
特に河岸に沿って繁茂していた柳は、 モリス が好んでモチーフに用いています。 増え続ける仕事の問題、 社会構造のひずみなどに悩むモリスの心を、 この「ケルムスコット・マナー」は 終生なぐさめ続けてくれました。 現在この建物は、ロンドン考古学者協会が管理し、 一般にも公開されています。
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